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[海外事例]地域の価値は自分たちで作り上げる―米国パサディナにおけるBID

BIDによる地域経営

BID(Business Improvement District)とは米国州法で定められた特別区制度の一種で、地域内の不動産所有者の拠出する負担金を用いて地域内の不動産価値を高めるべく地域活性化のための事業・整備を行う組織です。
パサディナでは2000年から、パセオ・コロラド(大型ショッピングモール)等の完成を見据えて周辺地区のより積極的なマネジメントのために、BIDを設立して様々な事業を展開しています。
それ以前は基本的に市と民間事業者とのパートナーシップが基本として進められてきたとのこと。もちろん、それがBID立ち上げの基盤となっています。

パサディナにおけるBIDの役割は、オーソドックスなもので

  1. 地区計画の策定
  2. 警備
  3. 清掃
  4. マーケティング(イベント)
  5. アドボカシー

になっています。
警備に関しては他の地区ほど治安が悪化していないこともあって、警備だけという形ではなく、「Old Pasadena Ambassador Guides」として、警備と地域案内を兼ねた人員を配置しています。また清掃に関してはゴミ箱のみならず、定期的な路上清掃などもかなりしっかりとやっているとのことで、路地を見渡してもゴミが転がっている状況は見あたりませんでした。
 

Old Pasadena Ambassador Guidesと、パサディナ専用のゴミ箱

 
また駐車場も大量に用意し、さらにインフォーメーションセンター(PASADENA Convention&Visitors Bureau)が設置されて、観光客向けにパンフレットの配布などをするなど積極的に地域外からの集客に力を入れています。
 

パサディナBIDの経営

パサディナのBIDでは5つのゾーンに分けてマネジメントされています。パサディナではこれらの地区から339の加盟があり、Assessment(域内の不動産所有者の拠出する負担金)の料率もそれらの地区によって分けられています。また土地そのものだけでなく、地上階と2F以上のフロア別の床面積によっても料率が分けられるなどかなり細かな料率設定が特徴となっています。
 
このような料率から集められた予算は、2005年には$667,070(80円換算=約5,330万円)となります。コロラド通り沿い(メインストリート)1人あたりの平均は、$2,825(80円=約22万円)となっています。最も負担している地権者では、$37,095(80円=約30万円)を年間で負担していることになります。
また居住者からもAssessmentを集めているため、居住者の平均も出ていますが、それは$451(80円=約3.6万円)となっています。
 
収入の全体の内訳としては、これらの地権者等からのAssessmentが49.1%、市からの契約金が39.3%、駐車場事業の収入が8.2%、イベントによる収入が3.0%となっています。
対して支出は、治安維持に32.8%、メンテナンスに26.8%、様々な支援事業に16.4%、マーケティングに14.9%、駐車場経営に9.1%となっています。
 
これを見ると収入は自主的な資金調達と、市による中心市街地に関する事業の請負が1本柱となっています。それでも駐車場収入だけで$113,304(80円=約900万円)、イベントからも$40,860(80円=約327万円)の収入があるのも日本からすれば驚きです。
 

 
Old Pasadena Management Districtの理事構成は、小売商、テナント、地権者、居住者、市役所などから23人がボランタリーに参加する形式をとっています。そこに専従スタッフが日常的なサービスを提供しており、それらはCEOをトップにしてマーケティングやメンテナンスなどの事業別に分かれるという基本的な組織形態を保持しています。

このような事業展開によって、Old Pasadena Management Districtは94%という高い支持率を維持しています。
また2005年の単年度においては、マーケティングにおいて広告収入を4万ドルほど増加させることに成功して、これによってマーケティングに投資できる資金が25%増加。また清掃事業では1年間で4900マイルの道を365日清掃を行い、14.5百万フィートもの面積の洗浄活動を行った。治安維持事業では、一週間あたり360時間から380時間ものパトロールを行った、などが実績として掲げられています。
 
このような絶え間ない努力によって、単に再開発を実施するのみならず、継続的な地域全体からの資金的、労力的なコミットメントを高めつつ、日常的なマネジメント業務を遂行してゆく体制が確立されていることは驚きです。
13万人程度の都市の中心部で、年間1,384,309$(80円=1.1億円)を費やして事業を展開していることもある意味では大変興味深い点です。実施している内容は決して目新しいことではないですが、地味な中にも成果が現れていることは、「当たり前のことをしっかりとやること」自体が大きな結果を生むのではないか、と感じさせられます。
 

 

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